ストレスが病気の引き金になると言われるのは、ストレスがかかると、自律神経や内分泌ホルモン、免疫などの体の機能が乱れるためです。よって、ストレスを普段から解消したり、軽減することは非常に大切なことです。
また、ストレスが慢性的にかかっている状態では、胸が閉じて猫背になり、呼吸も浅くなっています。ストレスを感じている方は、この機会に、自分の呼吸を見直してみてはいかがでしょうか。
呼吸法は、古来のインドで行われていた修行方法でもあり、お釈迦さまも悟りを開く前は熱心に修行したと言い伝えられています。呼吸が自律神経を整えることは周知の事実で、今でもヨガや古武道では呼吸法の大切さを伝承しています。今日はそんな自律神経を整えて、ストレス軽減に役立つ呼吸法の1つ「4-7-8呼吸」についてお話ししてみたいと思います。
1.呼吸法あれこれ
呼吸には、色んな呼吸法があり、口呼吸、鼻呼吸、胸式呼吸、腹式呼吸、片鼻呼吸、ウジャィ呼吸、と枚挙にいとまがありません。皆さんが、よく聞く呼吸法の分類では、胸式呼吸法と腹式呼吸法ではないでしょうか。
胸式呼吸とは、肋間筋(肋骨と肋骨の間の筋肉)を使い、肋骨の上げ下げにて行われる呼吸法です。一方、腹式呼吸とは、胸腔と腹腔を仕切っている膜状の筋肉である横隔膜を使う呼吸法です。どっちが良いか悪いかというわけではなく、役目がそれぞれ違います。胸式呼吸は交感神経を働かせます。そして、腹式呼吸は副交感神経を働かせます。
普段、私達が無意識にしている呼吸は、基本的に胸で行う胸式呼吸です。そのため、腹式呼吸に慣れていない人は、横隔膜を意識して動かしながらお腹で呼吸することができないかもしれません。よって、次に腹式呼吸をマスターするための2つのトレーニングを紹介します。
2.まずは腹式呼吸をマスターする
普段行っている胸式呼吸は無意識の呼吸法であるため、腹式呼吸は意識的に行う必要があります。自分が腹式呼吸ができるのかどうか試すためにも、一度下記の腹式呼吸をやってみてください。この腹式呼吸をマスターしてから「4-7-8呼吸」を実践してみてくださいね。腹式呼吸ができる方は、先にある「4-7-8呼吸」までとんでください。
1)仰向けの状態での腹式呼吸マスター法
(1)仰向けに寝て、おなか(おへその5cmほど下にある丹田(たんでん)のあたり)の上に本をのせる。本の重さは、のせた時に少しおなかに圧がかかるくらいが目安。
(2)腹筋をリラックスさせ、鼻で息を吸い、口で息を吐く、息を吸うと本が上がり、息を吐くと本が下がるように、深く息をする。本があがったり、下がったりするのが見えたら、肺の下の方まで酸素が入って腹式呼吸ができている証拠です。
2)座位での腹式呼吸マスター法
(1)背筋を伸ばして座り、左手をおなか(丹田のあたり)に、右手を胸に当てる。この時、違和感がある場合は手を逆にしても良い。
(2)腹筋をリラックスさせ、鼻で息を吸い、口で息を吐く、左手(お腹に当てている手)が上がったり下がったりするように、深く息をする。右手(胸に当てている手)はあまり動かないようにする。
これをマスターできたら、本題の「4-7-8呼吸」を練習していきましょう。
3.4-7-8呼吸
「4-7-8呼吸」は米国の医師アンドルー・ワイル博士が考案した呼吸法です。アンドルー・ワイル博士といえば、『癒す心、治る力 』『ワイル博士のうつが消えるこころのレッスン』等数々のベストセラーを出版された方でもあります。
そして、この「4-7-8呼吸法」は安倍晋三元首相が実践していたことでも有名です。安倍元首相は首相時代に、ある懇親会で「私は4-7-8呼吸法で心身ともに落ち着いてきた。この呼吸法で国会での野党からの追求も上手にかわせる」と笑顔で答えたそうです。
「4-7-8呼吸」は、数多い呼吸法の中でも吸気と呼気が1対2の割合で、吐く息が長く、自律神経のバランスを高める呼吸法と言われています。深い呼吸で脳細胞の酸欠状態が改善し、本来備わっている自然治癒力がアップします。また、副交感神経が優位になり、1分で眠れるようになってくると言われています。
1)「4-7-8呼吸」のやり方
では、腹式呼吸をマスターしたら「4-7-8呼吸」を実際に実践していきましょう。ここでは、仰向けで行う基本の「4-7-8呼吸」のやり方を紹介します。
(1)始める前の準備
まず、「4-7-8呼吸」を始める前に準備をしていきましょう。
- 仰向けに寝て、全身の力を抜く。
- 両手はおなか(おへその5cmほど下にある丹田のあたり)の上に手を軽くのせる。違和感があるならば体の横に手を置いてもよい。
- 目を静かに閉じる(ただし、無理に閉じなくてもいい)
- 上あごの前歯の裏側に舌先をつけて、息を吸う前にフーッと口から息を吐き切る。
- 呼吸をしている間は、舌先は軽く前歯の裏側につけたままにしておく。
準備が整ったら、次はいよいよ「4-7-8呼吸」を実践していきましょう。
(2)「4-7-8呼吸」手順
1.口を閉じて鼻から息を吸う。頭の中で1~4まで数え、胸いっぱいに酸素を取り込むように深く静かに息を吸う。
2.吸った息を肺の中で1~7まで数える。このとき、息を止めるのではなく、酸素が全身に行きわたるイメージを持つ。
3.頭の中で1~8まで数えながら、口からゆっくりフッーと息を吐く。鼻から吐いてもOKです。
2)「4-7-8呼吸」をやり終わったらチェックしてみてください
一度、この呼吸法をやる前と比べて、やり終えた時にチェックしてみてください。この呼吸方法を実践する前よりはリラックスしていると思います。
- 不安が和らいだ
- 怒りが収まった
- 緊張が和らいだ
- 焦りが収まった
- リラックスした
- 頭がスッキリした
- その他( )
3.「4-7-8呼吸」は、こんな時にオススメ
「4-7-8呼吸」は、リラックスには抜群の呼吸法のため、下記のようなシーンで有効とされています。電車やバスの中では、もちろん仰向けにはなれませんので立位や座位で「4-7-8呼吸」を行ってください。
- 就寝前:寝つきが悪い、考え事をしてしまう、興奮が抑えられない
- 電車やバスの中:満員で居心地が悪い、仕事を考えると憂鬱、会社に行きたくない。退屈
- 仕事や作業前:大勢の前で話す、試験や試合がある、歯医者に行く、
- 仕事中:上司・同僚・仲間に嫌味を言われた、セクハラ・パワハラなどを受けた、気持ちが乱れている、劣等感が生じた、パニックを防ぐ
上記のようなストレスがかかる時、そしてリラックスしたい時や寝る前に有効ですので試してみてくださいね。
4.おわりに
今回は、一般的な仰向けでの「4-7-8呼吸」の手順を紹介しましたが、この他にも座って行う方法、立って行う方法があります。また、「4-7-8呼吸」の効果をさらに高めるための「呼吸筋トレーニング」も参考欄にあげました『1分でぐっすり眠れるハーバード式4-7-8呼吸』に詳しく紹介されています。この本の中には、実際に「4-7-8呼吸」を実践している医師5名の臨床報告も掲載されており、がん患者の不安や恐怖の軽減、不眠、高血圧、肥満、手の痛み等様々な症例の報告も紹介されています。
今回は「呼吸法」の一つである「4-7-8呼吸」を紹介しました。普段の生活から、この呼吸を取り入れることで、急なパニック、不安、苦しさなどに対応ができます。呼吸法の良いところは、道具を必要とせず、しかも効果は立証されていることです。ぜひ、皆さんもこの呼吸法を実践してみてくださいね。
そして、最後にもう一つ、参考欄のraycop社のホームページにアンドルー・ワイル博士が実際に「4-7-8呼吸」を英語で説明しています。字幕も残念ながら英語のみですが、よろしければご覧ください。
では、今日はこの辺で失礼します。このブログがあなたのお役に立てることを願っております。
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参考:
1.『1分でぐっすり眠れるハーバード式4-7-8呼吸』わかさ夢MOOK(2019)
2.raycop:眠れない夜に試したい「4-7-8」呼吸法 – RAYCOP
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