皆さま、こんにちは、こんばんは、猿桃です。秋なのに熱い日々が続いておりますね。昨日は真夏の恰好で外出しましたが、それで丁度良いかんじでした。もう10月なのにどうなっているんでしょうね。
さて、今日のお題は何やら難しい理論です。実は、先日のブログで宿題が出たと話していましたが、それ以外にも読書の宿題が出ていました。それがこれなんです。カウンセラーの先生からは『ポリヴェーガル理論』と翻訳者の「花丘ちぐさ」さんのお名前しか指定がありませんでした。しかし、帰宅してgoogle検索したら沢山ヒットしました。(^^;
金欠の私は『からだのためのポリヴェーガル理論 迷走神経から不安・うつ・トラウマ・自閉症を癒すセルフ・エクササイズ』という本を購入。しかし、病気で頭が痛めていることもありスッと入ってこないので、この度『ポリヴェーガル理論入門 心身に変革を起こす「安全」と「絆」』を購入致しました。当然、入門書で理解してから、応用でセルフケアの順序なのに一足飛びしたかったのが敗因です。反省。とりあえず、入門書を購入しましたので、今回は後者の本のご紹介を皆様にしたいと思います。
この本の出だしが
英雄的に安全を希求する、全てのトラウマ・サヴァイヴァーに捧げる
とあります。俄然、読む気になりました。では、早速説明していきましょう。
1.『ポリヴェーガル理論』って何?
『ポリヴェーガル理論』とは、神経科学者のスティーブン・W・ポージャス博士が1995年にアメリカの学会で提唱した「複数の迷走神経に関する理論」です。
内容は、これまで単一とされていた迷走神経経路は、実は2つあるという理論です。一つは、哺乳類の進化の過程で獲得した「腹側迷走神経」、もう一つは「背側迷走神経」で爬虫類、さらには魚のような他の脊椎動物と共通しています。
人間はこれらの「腹側迷走神経」と「背側迷走神経」も持ち合わせているという理論です。
2.従来の自律神経と副交感神経の考え方
体温を上げたり下げたり、血圧を上げたり下げたりと人間は自動的に行っていますよね。「よし、血圧をこれからあげるぞ!」や「体温をこれから下げるぞ」と思っていなくても、健康な方ならば、正常な値に保たれる仕組みになっています。それは「自律神経」が行っています。「自律神経」って言葉は聞いたことがある方もいらっしゃいるのではないでしょうか?その「自律神経」には、従来は「交感神経」と「副交感神経」の2つがあると説明されてきました。
それぞれの働きは以下のとおりです。
1.交感神経
- 筋肉の緊張を保つ
- 心臓の鼓動を高める
- 呼吸を速める
- 瞳孔を開く
- 脂肪を分解してエネルギーを高める など
2.副交感神経
- 胃腸の働きが促進され消化や排泄をスムーズにする
- 脂肪を蓄積する
- 筋肉の緊張を緩める
- 脈や呼吸を穏やかにする
- 血管をひろげる など
3.『ポリヴェーガル理論』の自律神経の考え方
『ポリヴェーガル理論』では、副交感神経の主な神経である迷走神経は2つの経路があると考えています。
その2つは、「腹側迷走神経」と「背側迷走神経」です。また、この2つの神経経路は脳幹の違う部位から発しているとされています。
1.腹側迷走神経(副交感神経)
哺乳類と共に進化したもので脳の擬核より発し、顔のすべての筋肉(口から食べ物を取り込む筋肉、音を聞く筋肉、および他者と関わる筋肉)の調整と繋がっています。
この神経は、従来の副交感神経と同じような機能であり、呼吸を安定にし、リラックスして他者とのコミュニケーションを図ることができます。
この神経系は人間が進化の過程で獲得した哺乳類特有のものです。
2.背側迷走神経(副交感神経)
一方、背側迷走神経は、哺乳類の先祖である爬虫類が太古の昔から備えている神経で、この神経の役割は不動、シャットダウン、解離を起こすことにあります。爬虫類は命の危機に遭遇すると動きを止め、まるで死んでいるかのような状態になります。そして、哺乳類も背側迷走神経を持っており、横隔膜下へ接続しています。この神経が防衛のために採用された場合は、私たちは多くの爬虫類と同様、シャットダウンや解離という防衛反応を起こします。一旦このシャットダウンや解離が起きると元の状態に戻るのが困難とされています。
また、この迷走神経は横隔膜下に接続されていることから、トラウマや長期虐待サヴァイヴァーの患者は、繊維筋痛症や、消化の問題、腸の不調を抱えている事が多い原因であると考えられています。
4.防衛反応とポリヴェーガル理論
防衛反応とは、数千年前の人の祖先から受け継いできた、外界からの刺激に対して、自分を守ろうとする人体の働きをいいます。
相手の顔や行動を見て、声の調子を聞いて、色んな判断により、人間は今自分が置かれている状況が「安全」、「危険」、「生命の危機」なのかを察知し、自動でそれにふさわし神経回路にスイッチを入れる作用があります。
- 腹側迷走神経が優位:話し合いや譲り合いによる平和的解決ができる。
- 交感神経活性:1の話し合い等での平和的解決がなされない場合は、交感神経が活性化し、闘争・逃走反応となる。
- 背側迷走神経優位:戦うことも、逃げることもできない状態に追い込まれると、最終手段の背側迷走神経が発動される。不動・シャットダウン・解離がその状態である。
このように一番適した神経回路を人間は選択しています。
5.トラウマ・サヴァイヴァーとはどう関係があるのか
では、一体トラウマ・サヴァイヴァーはこの理論とどう関係があるのでしょうか?
この本にはこう書かれています。
哺乳類は、身体の状態を調整し、生き延びるために、他の哺乳類を必要とすると点で、非常に特別な脊椎動物でなのです。ここが、今日の話題の基礎となります。迷走神経は行動をとることによって、人とつながり、心を落ち着かせる機能を持っていいますが、それをトラウマが邪魔します。
哺乳類らしい迷走神経といえば、「腹側迷走神経」であり、これが優位であればリラックスして、社交的に社会交流が行えるのです。しかし、それを妨げているのが、トラウマだとここでは述べています。
現在、深く悩んでいるトラウマ・サヴァイヴァー、PTSDといった方々は、「背側迷走神経支配」の状態が長期に渡り続いた方々だと思います。この本の中では、一度背側迷走神経がシャットダウンすると元の自分には戻りにくくなると述べています。慢性的なストレスによる精神疾患がある人もこのような状態に陥っている可能性があります。
極度なストレス状態が続いたある日、身体がシャットダウンし動かなくなり、感覚も麻痺し、感情の抑揚も失うこんな経験があった読者さんはいらっしゃいませんか?目は魚の腐っているような目で、表情も乏しい、声に抑揚もない。こんな感じになりますよね?私もそうでした。(T T)
「腹側迷走神経」がよく機能している場合は横隔膜下では、交感神経と副交感神経は、それぞれが建設的な機能を果たし、自律神経バランスの絶妙なダンスを踊りながら恒常性を維持しています。しかし、トラウマに支配されていると「背側迷走神経支配」になっているので横隔膜下の消化の問題や腸の問題が発生しているのです。
そして、「背側迷走神経支配」になると困ったことに、周囲の「安全」「危機」「生命の危機」を読み取る社会交流能力がなくなると、この本では指摘しています。
6.社会交流システム、社会交流能力って何?
では、どうすれば脱背側迷走神経支配になれるのかという点を説明する前に、社会交流システムと社会交流能力について説明したいと思います。本によると
社会交流システムとは、顔と頭の横紋筋を制御する神経経路を総称したもです。社会交流システムは、身体感覚を投影するとともに、安全で落ち着いていて、愛と信頼を醸成する状態から、防御反応を起こす脆弱な状態まで、一連の変化を引き起こすための情報の入り口です。
↑本文から抜粋しましたが、なんのことかわかりませんね。
私なりに解釈しますと、相手と話している時に相手を「見て」、「聞いて」「感じる」ことで情報を読み取ります。相手の表情筋をよみとったり、相手の声色や抑揚で一瞬に相手の本音が聞こえる人もいるでしょう。口では優しい言葉を言っていても、人によっては見下されたり、馬鹿にしていると感じる人もいるかもしれません。こういった、相手の「合図」は自分にとって「安全」なのかを見極める能力を社会交流能力と呼び、「安全」かどうか決めるための神経経路を社会交流システムと呼びます。
7.脱背側迷走神経支配
一体、背側迷走神経支配の状態から脱するにはどうしたら良いのでしょうか?
結論から言います。「安全」を感じることが防衛システムを遮断し、社会交流能力を取り戻す唯一の方法だとこの本では訴えています。しかし、それ以外にもこの『ポリヴェーガル理論』を学び、これまでの自分の病識を変えることがとても大切だとも述べています。
1.安全と感じる方法
・音楽療法:喉頭・咽頭筋が社会交流システムの一部であることが分かった。
歌うことや吹奏楽器を演奏することで、生理学的状態が穏やかになり社会交流システムが活性化する。歌うことは、ただ息を吐くだけではない。歌うとき、聴きます。これが中耳筋の神経の緊張を増進します。喉頭咽頭筋の調整を使っています。あとは顔面神経と三叉神経を通して口と顔の筋力を使う。
・ヨガの呼吸法:「社会交流システムのヨガ」と言ってよく、呼吸しながら顔と頭の横紋筋を使っています。
・セラピスト、家族、友人:「あなたは何も間違ったことはしなかった」と伝える事から始めましょう
私達は『安全』であると感じるためには、他者の存在の助けを必要としているのです。これが理論の基礎となります。
*これ以外のセルフケアの方法等は、『からだのためのポリヴェーガル理論 迷走神経から不安・うつ・トラウマ・自閉症を癒すセルフ・エクササイズ』をご覧ください。
2.『ポリヴェーガル理論』を腑に落とす
トラウマやPTSDに悩んでいる人達は、自分たちを犠牲者だと考えてしまいがちですが。しかし、本の中ではそうではないと訴えています。私たちの身体は間違った反応をしたのではない、背側迷走神経支配しシャットダウンするほど危機的状態だったのだと認識しなおすことで自分のトラウマやPTSDに対する考え方も変わると伝えています。
身体は意味があって特定の反応を示すのだということ、そして身体は英雄のように行動しているのだと理解してもらいます。身体はは私たちを助けています。身体が言うことを聞かないわけではないのです。身体はなんとか生き延びることができるように助けているのです。
私はいつも、臨床家に対し今までとは違ったことをやってほしいと話します。私は臨床家に、「トラウマを受けたクライアントに対し、『あなたの身体がそのように反応したことを祝福してください』と伝えてください」と言うことにしています。
トラウマのような非常に深い生理学的、行動的な状態を一旦体験すると、確かに今の社会生活に困難をきたすことがあるでしょう。それでもあなたの反応は正しかったのです。ですから、トラウマを受け入れた人たちは、自分たちの身体がそう反応したことをお祝いするべきなのです。なぜかと言うとあなたの身体がそのように反応したからこそ、あなたは生き残ることができたのです。
8.おわりに
私は長年にわたる虐待で、お腹の調子は悪いは、心もボロボロだし、人間不信で、誰を見ても敵に見えるし、もう本当に苦しくてたまりませんでした。今回、この本を読んでみて、「そうか、私の身体は正しい反応をしていたんだな、そして私を守ろうとして身体はシャットダウンしてくれたんだな」と腑に落ちました。
この理論でいくと、長年のお腹の不調も説明がつきます。あと、劇うつ時に、誰ともあまり関わりたくないという社会交流能力の欠如も納得です。
願わくば、「背側迷走神経支配」から脱出して「腹側迷走神経」を優位にし、人と関わる行動を行い、穏やかに生活したいです。(笑)
ここまで読んで頂き有難うございました。このブログが貴方の助けになれば光栄です。
↑ ポッチッと押して貰えると今後の励みになります。宜しくお願いいたします。
参考
1.『ポリヴェーガル理論 心身に変革を起こす「安全」と「絆」』:ステファン・W・ポージェス(2021)春秋社
2.『からだのためのポリヴェーガル理論 迷走神経から不安・うつ・トラウマ・自閉症を癒すセルフ・エクササイズ』:スタンレー・ローゼンバーグ(2022)神田明
3.
ポリヴェーガル理論|自律神経系の症状と治療を説明する最新理論 | 東京カウンセリングオフィス (tokyoco.jp)
4.
ポリヴェーガル理論を簡単に解説、苦しむ人を助けるその秘密とは? (tiger-forse.com)
5.
ポリヴェーガル理論とは?なぜ人は挑戦ができなくなってしまうのか? | セミナーといえばセミナーズ (seminars.jp)
コメント